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2018/10/17

[侵害予防] 判断の基礎と検索設計の注意点(1)



こんにちは、サーチャーの酒井です。

弊社では侵害予防調査をお預かりする機会も多く、
また、
定期的に講習会もさせて頂くのですが、(近日の講座はこちら(東京)

「侵害予防調査って、検索設計が難しいです。」

というお声、比較的よく伺います。


侵害予防調査にも「原則」があって、
原則を踏まえて「応用」「実際」があるのですが、

今回と次回、
講習スライドを何枚か使って、
「原則」を書いてみます。

※出願権利化をされている皆様にとっては
※当たり前の話が多いかと思われますが。。


まず・・・
「侵害予防調査」というと

自社製品やサービスが、他社特許権を侵害していないか?
警告状が届いたり、
損害賠償請求、販売差止などに追い込まれるリスクはないのか?

等、事前に確認するための「リスクの有無を確認する調査」です。


その、他社特許権は
どんな書類の、どこを見ると確認できるのか? というと、

「特許公報」の「特許請求の範囲」になります。


「特許請求の範囲」の文章はこんな感じ。↓

※折り畳みます







この「特許請求の範囲」
一番最後の行を見ると「チョコレート付きスティック状プレッツェル」とあり、
みなさんもきっと、昔からお馴染みの
「あのお菓子」を連想されているのでは?と思います。


さて・・・侵害予防調査、という事なので、
侵害判断の基礎を確認する必要があります。





以前、メーカー調査部門に勤務していた頃には・・・

「やばい!図面がうちの設計内容とそっくり!
パクられた!(マネされた)・・・と思ったら、
先に登録になっている!なんて図々しい!!
「これ・・・うちの製品、侵害になっちゃうんですか!?

と、技術者が駆け込んで来た事もありました。

確かに心配になってしまいます。が

図面がそっくり、というのは、
問題ありそうな公報をピックアップするヒントにはなるものの、

図面がそっくり=即アウト! ではありません。


まず最初に
---------------
・権利範囲を確認する
・技術的範疇は同一か?
・業として実施しているか? 
---------------
といった段階があって、

その次に
「文言侵害」の有無を確認します。



※他に「均等侵害」がありますが、
※この記事は「基礎編」のため、割愛させて頂きますね。


さて・・・
請求項に記載された発明を構成要件に分ける、ということ。
これは正直、何回かやってみて慣れる、という側面もあるものの・・・


ここでは「例」として
プレッツェルの請求項を、工程毎に分けてみました。
A~Dの4つに分けています。(構成要件の分節)




そして、侵害判断の基礎となるのが
「オールエレメントルール」です。

請求項に記載されたすべての特徴(=すべての構成要件)を有する実施製品は侵害品。
という事なので、


※表はクリックで拡大します。


菓子1:構成BとDに合致していない = 非侵害

菓子2:A~D、全ての構成が合致 = 侵害

菓子3:A~D、全ての構成が合致して、トッピングを追加 = 侵害


という風に判定します。
ここまでが基本の話。




次、応用です。


オールエレメント(すべての構成要件)が一致したら侵害。
ということは?


構成要件が極端に少ない権利があったら、
どうなるでしょうか。
ちょっと想像してみてくださいね。

------------------------------------------
構成α) 小麦粉・バター・砂糖を含む生地を焼いてプレッツェルとする工程と

構成β)  前記プレッツェルをチョコレートで被覆する工程

からなるチョコレート付プレッツェルの製造方法
-------------------------------------------

という権利があったとしたら。。。

先ほど、表にあったお菓子1~3、
全部が権利範囲に含まれる

という事になります。


一般的に、
構成要件の少ない権利は
権利範囲が広い、と言われる事が多いです。


以上を踏まえて

もし
「チョコレート付きバター風味プレッツェル」の
製造販売を検討している、としたら・・・


プレッツェル単体の特許
・(単純な)チョコレート付プレッツェルの特許
・チョコレート付プレッツェルの改良特許で、自社製品と構成が一致するもの

などが、検討範囲の候補になりそうです。


ですが。



ポッキーの歴史


・・・今まで「プレッツェル」と一般名詞で書いてきたけれど、
結局「ポッキー」を登場させてしまいました(笑)


ええと。ポッキー。
1966年誕生なんですよね。
50年以上の歴史。

そうなると
単純な「プレッツェル × チョコレート」では
2018年の今、権利を取得するのも無理だろうし、
基本特許も切れているだろう、
と考えるのが妥当なのではないでしょうか。


※余談ですが、このような「基本特許の権利切れ」に基づくのが
※ジェネリック医薬品になります。
※最近だと「温めるだけの基本機能に絞った電子レンジ」のような
※ジェネリック家電も増えていますね。


ということで・・・

現時点で注意すべきラインはどの辺りなのか?
自社の実施状況は?
他社の出願権利化状況は?

といった事が
検索設計の基本的な方向性、と考えられます。


そして、もうひとつ大切な検討事項があります。
長くなりましたので、これはまた次の機会に。(ぺこり)






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