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2018/11/02

[検索雑記] 「糖質ゼロ」と用途発明&分割出願



こんにちは。サーチャーの酒井美里です。

今週「特許取得」がニュースになっていた、
こちらの記事。


(source : 2018/10/29 日本経済新聞


飲酒後の臭い、といえば
まだ実家にいたころ、父がたまに酔っ払って帰ってきたりすると
「うわー、お酒くさいーー!」
と、瞬時に避難していた事が、真っ先に思い出されますが

上記の記事によると、
糖質が少ないければ「お酒くさく」なりにくいようですね!


そして、記事では
「食品の用途発明の特許を取得した、とのこと。
検索してみますと

特許6404403 清酒 (リンク先:J-PlatPat)

がヒットします。

※折り畳みます。「用途発明」と「分割出願」の話題は記事の続きから。



こちらの請求項、
【請求項1】
糖質を純米酒における糖質濃度よりも低い濃度で含有する飲酒後呼気中不快臭気物質が前記純米酒の飲酒後よりも増加しない飲酒後の酒臭い不快臭を敬遠する人が飲むための清酒。

【請求項2】
前記飲酒後呼気中不快臭気物質は、2,4,5-トリメチル-1,3-ジオキソラン、ダイアセチル、アセタール、アセトイン、2,3ブタンジオール、及びイソアミルアルコールからなる群から選択される少なくとも一種である請求項1に記載の酒。
特許6404403 清酒

とあり、

請求項1が短いのもインパクトありましたし、

「用途発明」の用途って
「酒臭い不快臭を敬遠する」こと、なのですよね。

確かに日本経済新聞の記事で見た通り、ではありますが
「ほ、本当だ・・・!」 という驚きがありました。


そしてもうひとつ、
この特許「清酒」の出願情報を見ますと

(21)【出願番号】特願2017-100556(P2017-100556)
(22)【出願日】平成29年5月22日(2017.5.22)
(62)【分割の表示】 特願2012-165441(P2012-165441)の分割
【原出願日】平成24年7月26日(2012.7.26)


分割出願なのですね!


親出願も既に登録されていて、
その出願内容は、低糖質の日本酒なのかな・・・?という予想を裏切り、

特許6148831 アルコール飲料の評価方法、及びアルコール飲料の評価装置

評価方法と評価装置、の出願でした。

【請求項1】
アルコール飲料の飲酒後の呼気中不快臭気物質の閾値を設定し、
1)前記アルコール飲料の飲酒前の呼気中不快臭気物質濃度と飲酒後の呼気中不快臭気物質濃度との差異
及び
2)前記アルコール飲料の飲酒後の呼気中不快臭気物質濃度と前記閾値との差異
を指標として解析することによりアルコール飲料の特性を評価するアルコール飲料の評価方法。

「飲酒後の不快臭気」に関する内容、ではありますが、

評価方法と評価装置の発明から「清酒」が分割出願できるのかな・・・?

と、不思議になり、

思わず、全文読んでしまいました。



分割出願できるとしたら・・・?

元出願の実施例、この辺りなのでしょうか。
【実施例】
【0048】
[実施例1:清酒の酒質の違いによる飲酒後の呼気中不快臭気物質の評価]
清酒のうち、純米酒(アルコール度 15%)600ml又は糖質ゼロ(アルコール度 13.5%月桂冠社製)600mlを飲酒し、飲酒2時間後、及び飲酒5時間後において呼気中不快臭気物質の濃度を上記と同様の方法でGC-MSにて定量し、飲酒前の濃度と比較した。比較する呼気中不快臭気物質は、清酒で増加し易い、(a)2,4,5-トリメチル-1,3-ジオキソラン、(b)ダイアセチル、(c)アセタール、(d)アセトイン、(e)2,3ブタンジオール、(f)アセトアルデヒド、及び(g)イソアミルアルコールを用いて行った。試験は、6人のパネラーにより行い、結果は、6人のパネラーの呼気中不快臭気物質の濃度の平均値で示した。誤差範囲は標準誤差で示している。以下の表4に、純米酒及び糖質ゼロの酒質を示した。

と思って見ていたら

「清酒」の経過書類中、
「上申書」にこのような記述がありました。

(1-1-1)請求項1について
請求項1は、原出願の出願当初の明細書段落番号[0048]-[0050]、及び図7-9に記載された事項に基づく発明を新たに記載したものです。請求項1の「糖質を純米酒における糖質濃度よりも低い濃度で含有する」の記載は、原出願の出願当初の明細書段落番号[0049]に記載の表4における純米酒と糖質ゼロ清酒との糖質の値、及び原出願の出願当初の明細書段落番号[0050]の記載「糖質ゼロと純米酒の酒質は、表4に示されるように、糖質の含有量が大きく異なっている。したがって、アルコール飲料の糖質の含有量を減らすことにより、飲酒後の呼気中不快臭気物質を低減させることが可能であることが示唆された。」に基づきます。


やはり、実施例付近を分割したようです。

それにしても「方法と装置」から「清酒」
考えた、というか、
分割できるぞ? と気付いた方はすごい!
発想が柔軟だ~! と思いました。


調査が行き詰まり気味の時にも、
柔軟な考え方、発想の転換が 突破口になる事、よくあります。
型にとらわれない思考、見習いたいものです。

それでは。






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1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

>不快臭を敬遠する人が飲むための清酒。

ということは、
それ以外の人も飲むことを想定した清酒は非侵害?

実際「糖質控えめ」の清酒が以前から販売されていたのでしょうから、
販売方法を指定したある意味ビジネスモデル発明と言えなくもないのでは?

https://system.jpaa.or.jp/patents_files_old/201701/jpaapatent201701_077-087.pdf

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