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2015/03/11

「ノンアル特許」で感じた、知財ノウハウの蓄積。


知財系界隈(?)では、昨日から大きな話題になってますね。

サントリー、アサヒを提訴 「ドライゼロが特許侵害」(日経Web版)

Today's photo |Beer in Bruges by Philipp Reutter on 500px


きちんとした分析などは、
とてもとても、できませんけれど・・・

対象の特許くらいは、見つけてみましょうか。

日経の上記記事によると
サントリーは、糖質やエキス分を一定の範囲内にしたビール風味飲料として2013年10月に取得した特許権

とのことでしたので

特許第5314220号 pHを調整した低エキス分のビールテイスト飲料 
特許第5382754号 pHを調整した低エキス分のビールテイスト飲料
※いずれもリンク先はEspacenet

こちらの2件が該当、と思われます。

※追記|サントリーの「お知らせ」 ならびに
アサヒビール「ニュースリリース」によると、
今回問題になっているのは片方のみ、特許第5382754号とのこと。
アサヒビールのニュースリリースの方が、少し詳しいです。(3/11 PM)

・・・ええと、ちょっと長くなりそうなので、折り畳みますね。




Espacenetで見ると2件は「パテントファミリー」として、
1件のレコードにまとまっています。
他国の出願~公報発行状況は、次の通り。

US2014328993 (A1)
TW201334709 (A)
MX2014006166 (A)
KR20140098820 (A) KR20140104964 (A)
JP5314220 (B1) JP2013255504 (A) JP2013188221 (A) JP5382754 (B2) 
WO2013077292 (A1)
CN103126029 (A)
CA2856023 (A1)

※上記はEspacenet収録分です。
Espacenet収録にはタイムラグあるので、他の国が隠れている可能性もあります。

ひとまず、上記で判明しているのはWOを除いて7ヶ国分の出願、です。


ここで、JP(日本)の行に注目です

(A)が公開、(B1)が登録の番号です。


パッと見、公開-登録のセットが2組、と思いますよね?



違うんですよ、これが!(笑)



'220の公報を、穴が開くほど凝視してみると?
↓↓↓

※クリックでちょっと大きくなります。


公開番号・・・

・・・
・・・・・
・・・・・・・・?

載ってなくないですか?

それに、早期審査もしていますよね。


そう。
公開前に、登録公報が出ているのです。


では、どういう状況なのか?というと、


まず、このパテントファミリーに属する日本特許は3件あります。
'220が親で、2回の分割出願をしています。(↓はIPDL・経過情報より)

※だから、Espacenetでも「パテントファミリー」なのですね。

なお、2世代目の分割出願は、
IPDLで見たところ、審査は進んでいませんでした。


-----------------------------------------------------

話は変わりまして。

サントリーさんの事、時々講習ネタに使わせて頂いてます。


こんなスライド。
有名な「花王ヘルシア」との比較なんですけど・・・


サントリーは、1980年代から茶飲料(ウーロン茶)を手がけてきた。
一方、花王は全くの異業種からの参入。

しかし、花王の特許網が強力だったため、
サントリー「黒烏龍茶」の市場投入は、
「ヘルシア緑茶」の3年後となった、という、有名なお話です。



スライド中で紹介している

「他の産業と比べて食品業界は飲料の原材料について
いちいち特許取得するという風潮は少なかった (サントリー)」

というコメント、


元記事が、こちらで読めます
↓↓
HOPSで経験した苦い思い、ヘルシアの経験とサントリーの知財戦略
(モノづくり最前線レポート(16):
「動的」知財マネジメントが円盤型市場を切り開く|MONOist2010年01月27日)


記事中では、次のように紹介されています。

そのような業界に、せっけんや入浴剤などで知られる花王が特定保健用食品の認定を受けた「ヘルシア」ブランドを投入。メタボリックシンドローム対策がうたわれた当時、特定保健用食品に認定された同製品は、「メタボ対策飲料」という市場を作り上げた。

サントリーもこの市場に参入すべくリサーチをかけたところ、いわゆる「パラメータ特許」によって製品原材料の配合などを含む製品製法にかかわる特許がすべて取得されている状況だったという。これが障壁となり、市場参入を断念せざるを得なかったのだ。

(中略)

「こうした知財への取り組み方は、飲料を中心とする食品業界ではあまり行われてこなかった。異業界から参入してきた花王が持つ知財ノウハウを知ったことは非常にインパクトがあった(辻村氏)」

また、発泡酒でもこんな事があったそう。

第2のビールと言われた発泡酒市場についても知財に関する苦い経験があるという。

酒税法の改正を端緒としたビール値上げ問題への対応として、サントリーは早い段階で、ビールと近い風味を実現した発泡酒「サントリー HOPS」を発売、市場を開拓した。にもかかわらず、製法の独占などといった対策を行わなかった結果、業界でアドバンテージを取ることができなかった。知財による製品保護という考えがあまり浸透していなかった時代でもある。

「結果的に競合他社の参入を許してしまうことになった」

と辻村氏は振り返る。

上記のスライドを説明するときにも
この記事は、いつも引用させて頂いていて、
そのたび、

「当時、どんなに衝撃を受けられた事だろう」 と思っていました。。




そして、今回の報道。

サントリー、アサヒを提訴 「ドライゼロが特許侵害」(日経Web版)



HOPSで経験した苦い思いの記事を踏まえて、
今回の報道を見聞きすると、


ノウハウの蓄積や、
知財力の強化なども、想像に難くないな、と感じます。


それでは。



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